新型コロナウイルスとシクレソニド(オルベスコ)
こんにちは。
カダラボ・薬剤師記事担当ゆうです。
新型コロナウイルスに、吸入ステロイドのシクレソニド(商品名:オルベスコ)が効くのではないかと報道されています。
そこで、現時点(2020.3.8)でわかっている情報や、研究論文の内容をわかりやすくまとめました。
シクレソニド(商品名:オルベスコ)とは?
シクレソニド(商品名:オルベスコ)は、気管支喘息の患者さんに使われる吸入ステロイド薬です。
(職場にあったので撮ってきました)
気管支喘息とは、空気の通り道である「気管支」が狭くなって、息がしにくくなる病態です。
気管支が狭くなるのは炎症(赤く腫れ上がる)が起きているからです。
この炎症を抑えることできるのがステロイドであり、シクレソニド(商品名:オルベスコ)を吸入することで治療できます。
どのような報道がされたのか
3/3(火) 20:18配信のYahoo!ニュースでは、
新型コロナウイルスの感染者にぜんそくの治療薬を使った結果、3人が快方に向かったことがわかった。
神奈川県立足柄上病院などのグループの報告によると、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船し、ウイルスの陽性が確認された65歳以上の男女にぜんそくの治療薬「シクレソニド」を使ったところ、3人が快方に向かったという。
とあります。
もちろん、テレビでも大きく取り上げられていました。
私はこれを見たとき、こんな報道をして大丈夫なのか?と思いました。
あたかも「シクレソニドが効果のある薬だとわかった」という印象を受けます。
マスコミとして視聴者の注意を引きつけることが大切なのはわかりますが、勘違いする人が多いと思います。
報道の背景を知ろう
そもそもこの記事の内容は、日本感染症学会に投稿された論文に由来しています。
論文の中身は後述しますが、そこで著者らは、
「当然ながら疾患背景が異なっておりこの症例数のみ(3例)で効果を論ずることはできない。(中略)今後の使用症例の蓄積と検討が望まれる。」
と記載しています。
つまり、まだ分かっていないんです。
論文の内容
まず、今回の症例の事実を述べます。
・新型コロナウイルス感染者3名が改善した
・その3名は、シクレソニドを吸入した。
です。
これに相関関係があれば、明るいニュースです!
ただ、何度も言いますが、まだ相関関係があるかどうか分かっていません。
症例
症例3例を見ていきます。
(わかりやすさを重視するので、多少の正確性が欠ける点はご了承ください)
症例①
ダイヤモンドプリンセスから搬送
⇒抗生剤2種類を使っていたが、改善せず酸素濃度も低い(肺炎で呼吸しにくいため)
⇒酸素吸入を増やしエイズ薬を使った結果、熱が下がり、酸素濃度は改善
⇒しかし、食欲は改善せず副作用が認められたため、エイズ薬を中止
⇒代わりにシクレソニド開始
⇒症状改善
※ただし、肺炎を示すCRPという数値は、シクレソニドを使う前から下がってきている
症例②
ダイヤモンドプリンセスから搬送
⇒下痢・発熱・食欲不振
⇒酸素吸入・シクレソニド開始
⇒症状改善
症例③
ダイヤモンドプリンセスから搬送
⇒倦怠感、食事が半分程度
⇒シクレソニド・酸素吸入開始
⇒2日後酸素中止
⇒症状改善
効果ありそう?
感覚的はそう思えます。
ただ、こういった研究は根拠を求められるので、判断するにはまだまだ症例数が足りません。
・酸素が良かったんじゃない?
・シクレソニドを使わなくても治ったんじゃない?
・病院のケアが素晴らしかったんじゃない?
と反論されるかもしれません。
ただ、新しく薬を開発するより、今ある薬で治療できるのなら、こんなにいいことはありません。
今後の結果に期待したいですね!
まとめ
・シクレソニド(商品名:オルベスコ)が、新型コロナウイルスに効果がある「かもしれない」
・シクレソニドは気管支喘息治療薬なので、新型コロナウイルスに対するデータが少ない
・データが少ないので、効果を期待するには時期尚早
・今後に期待!